こんにちは。計測エンジニアリングシステム株式会社です。
この度、「COMSOL Multiphysics」のユーザー様である 東京都市大学 准教授 平野拓一 先生の著書「有限要素法による電磁界シミュレーション」が出版されました。
著書の出版に伴い、平野先生の著書にかける思いやご研究分野について弊社主催の COMSOL特別セミナーにてインタビューをさせていただきました。
– 専門 –
電磁界理論(モーメント法 [MoM; Method of Moments]、 有限要素法
[FEM; Finite Element Method]、FDTD法, ICT [Improved Circuit Theory])
アンテナ工学
情報通信工学
マイクロ波回路・アンテナ設計・EMC対策 (近代科学社Digital)
本書は,有限要素法で電磁界シミュレーションを行う際に必要とされる,検証方法や手順などの知識をまとめた書籍です。
まず,電磁界の物理的性質およびマイクロ波やアンテナ工学の基礎知識を説明し,次に最低限の数式を用いて,有限要素法による電磁界シミュレーションの原理を説明します。続いて,電磁界シミュレータCOMSOLを用いた実際のシミュレーションの流れ,豊富な例題・解析例,またEMC対策電磁界シミュレーションを応用する手法などの解説を行います。
著書の出版に伴い、平野先生の著書にかける思いやご研究分野について
弊社主催のCOMSOL特別セミナーにてインタビューをさせていただきました。
弊社セールスマーケティング部 橋本(以下、橋本):
平野先生、この度は、出版おめでとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
平野先生:よろしくお願いいたします。
橋本
平野先生
その中で、無線通信技術開発として、ミリ波帯オンチップアンテナを中心とした小型無線機の研究を行っています。また、乳がん診断用のレーダー技術の開発を行っています。
広い分類では無線通信工学ですが、特に、アンテナ・マイクロ波工学、通信用信号処理の分野を研究しています。
橋本
平野先生
今回、今まで作った資料を1冊の本にまとめ上げることができ、すごくスッキリしました。
このような機会を作っていただき、書籍化のご提案とご協力をいただいた計測エンジニアリングシステムの皆様および学会関係の皆様にお礼申し上げます。
橋本
平野先生
その点に時間がかかり、苦労しましたが、電磁界シミュレーションを学びたいという方に、適切な説明ができるようにまとめることにはやりがいを感じました。
今まで、同じような内容で発表することはあったのですが、自分でもいつか使ったと思う資料を探すのに時間がかかったり、新たに図面を描いて完成したと思ったら、過去の資料で同じ図面を見つけてショックだったりしたことがありました。一度まとめると、もうこのような苦労はしなくていいのが嬉しいです。
橋本
平野先生
例えば、吸収境界条件の説明が特徴的だと思うのですが、理論のみに重点を置くとPMLの特性が一番いいと説明されることが多いと思いますが、実用性を考え、使い方を工夫すれば、どの種類の吸収境界条件を使っても実用的であることを説明しています。
また、マイクロ波回路・アンテナの解析のみならず、6章にEMC問題にも応用できる活用例を記載いたしました。
橋本
平野先生
橋本
平野先生
そこが市販シミュレータにはかなわないところです。また、後処理で電磁界分布を自由自在に簡単操作で綺麗に可視化できるところも便利です。
COMSOLが特に便利なのは、非常に柔軟に解析条件などを設定できることがあげられます。研究者としても、内部でどのような処理をしているのか非常にわかりやすくなっていて、透明性が高い設計になっています。
また、私はまだ活用したことはないですが、COMSOLはCOMSOL Multiphysics という名称のとおり、いろいろな物理現象、マルチフィジックスの解析や、自分で処理するルーチンとの組み合わせが非常に柔軟にできるようになっています。
特に、研究、教育分野ではこの柔軟性と透明性が魅力的です。
橋本
平野先生
そのようなとき、アプリ解析などで、実際に教科書に書かれている問題を解析して、結果を出力したり、電磁界分布を可視化したりすれば、数式の理解度も高まり、勉強も継続できることになると思います。
昔、東海道などを歩いた旅人が茶屋で休憩して体力を回復するような効果が期待できます。また、アプリ解析で訓練しておけば、実用的に研究に活用したり、製品開発するために活用したりする訓練にもなると思います。
橋本
平野先生
シミュレーションをメインとする人、実験をメインとする人がお互いに相手側の結果が信頼できないということがあります。実際に、どちらも同じように結果の信頼性を低下させる要因を持っています。
シミュレーションでは、モデル化であったり、数値計算精度が信頼性の低下の要因です。実験では、手法、測定器の部品の精度やノイズが原因となるデータの信頼性の低下が考えられます。
どちらにも問題があるということを認識し、どのような問題が考えられるかを認識した上で進めれば、どちらも十分役立ちます。
私の経験をご紹介しますと、半導体のオンウェーハ測定のシミュレーションがその一例になります。オンウェーハ測定ではプローブと言われる針を半導体チップ上のパッドに接触させるのですが、その部分の励振のモデル化が明解ではありませんでした。
集中ポートで励振するのか、その場合にどのように集中ポートを設定するのかなど多くの疑問がありましたが、実際に実測に合うような励振を見出し、それが合う理由もわかりました。もし合わないときには、オンウェーハ測定の方法自体に踏み込み、プローブの影響を除去したデータと比較する必要がありますが、そのためにはディエンベディングという操作をする必要があります。
実際にモデル化を検証するためにディエンベディングも行い、シミュレーションと実測は非常によく合うということを確認したことがあります。
シミュレーションにも実測にもそれぞれ固有の問題はもちろんあるということを認識して、それぞれの手法を活用するのが良いと思います。
一度シミュレーションの信頼性が確認できれば、パラメータスタディーは実験よりも容易なので、速く研究が進みます。また、電磁界分布結果を描けば、何が起きているのか調べることも容易で、実験を補うようなデータを出してくれます。
橋本
合わせて物理教育で数値計算は重要と思っていますので、先生のお考えを伺えればと思います。
平野先生
そのようなときに、シミュレーションを活用し、結果を確認したり、可視化したりして物理現象の本質を理解しながら勉強を進めるのが良いと思います。
数式を使って綺麗に閉形式で解ける問題を解くことも重要ですが、それはその専門分野で研究する上での本質ではなく、あくまで参照解として専門家が知っておくべき基礎知識に過ぎないと思います。
本質的な物理現象をイメージし、数値シミュレーションして検証する能力を有することが、産業界に出ても専門家として必要なことなので、積極的に物理教育にシミュレーションを取り入れていきたいと思います。
橋本
平野先生
シミュレータの内部の原理がわかると、単に知的好奇心のみならず、非常に効率的に、間違えないように使うことができると思います。例えば、実験に対応するシミュレーションのモデルはどのようなものがいいかが見えてきます。
是非、内部の原理を知りたくなった、効率的に使いたいという方に読んでいただきたいと思います。
橋本:インタビューはこちらで以上となります。本日はありがとうございました。
平野先生:ありがとうございました。
今回は、東京都市大学 准教授 平野拓一先生 へのインタビューをお送りしました。
平野先生には、電気学会の5G関連の委員長として、日本の通信事業の発展のためにご活動頂きたいと存じます。
COMSOL Multiphysics についてはこちら!
https://kesco.co.jp/comsol/
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