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半導体・通信の発展の概要 前編

平野拓一 (東京都市大学) 平野拓一 (東京都市大学 理工学部 電気電子通信工学科・准教授)

– 専門 –
電磁界理論(モーメント法 [MoM; Method of Moments]、 有限要素法
[FEM; Finite Element Method]、FDTD法, ICT [Improved Circuit Theory])
アンテナ工学
情報通信工学

歴史や技術以外の全体像について学ぶことは、技術を学ぶ上でも大変重要であり、また楽しいものです。ここでは半導体技術発展の概要について簡潔に説明します。ただし、半導体、IC、LSIの発展については著者の知識も超えて、とてもこのページで説明しきれないほどの内容なので、詳しくは[1][2]などをご参照ください。

戦後、敗戦した日本は貧しいながらも努力して発展し、技術もアメリカに追いついていく様子が[1][3]で描かれています。
その後、起伏はあるものの、順調に発展していきます。1970年代には日本の自動車生産台数はアメリカを抜いて世界No.1になりました。アメリカを抜いたことでアメリカからクレームが入り日米自動車摩擦が起きました。自主規制を行ったりアメリカに工場を作って現地生産(現地の経済にも貢献する)をしたりして関係を保ったようです。
1980年代には半導体生産でもアメリカを抜き、スーパー301条としても知られている日米半導体摩擦が起きました。この解決は自動車のように上手く処理できず、現在の日本の衰退につながってしまっています。
日本国内の外国製半導体のシェアを20%に引き上げることを目標にしたようで、ここで日本自らが韓国をバックアップしてしまいます(自動車のようにアメリカに工場を作って生産せず、リストラされた社員が土日に韓国に通って安く技術供与してしまい、それが現在のサムスン電子の発展につながっているそうです。韓国の自動車・半導体は日本の技術が流れて発展したものです)。
1980年代バブル経済の時代には“Japan as Number One”とも言われるようになり、自動車、半導体産業とともに経済も(バブルなので実体はかなり空っぽですが)アメリカを追い抜く勢いでした。バブル経済が大蔵省の総量規制をきっかけとしてはじけ、経済も低迷し(実体に戻り?)ました。

Image by iStock

しかし、1990年代以降はインターネット携帯電話などの通信が発展したので、産業・経済構造はその場をしのげていたように思います。
ただ、日本の通信規格・販売方式・通信機器はi-modeなど、HTMLの機能限定版を使う独自方式で、後に世界標準規格に従うようになると上手くいかなくなるとガラパゴス(ガラパゴス諸島のイグアナのように閉鎖環境で独特の発展をしている。裏を返せば閉鎖環境を出た世界では生きていけないという意味)と呼ばれるようになりました。それが昔のi-modeなどの折り畳み式携帯電話がガラケー(ガラパゴス携帯)と呼ばれている理由です(本当はこのスタイルの携帯電話はフィーチャーフォンと名付けられています)。
日本のガラパゴス状態が崩壊したきっかけは2007年AppleiPhoneの登場でした。iPhoneはタッチパネルでMacのOSと同程度の(?)性能のiOSで動いており、電話機能はコンピュータの1つのアプリという設計で、フィーチャーフォンのような低機能なブラウザがおまけのようについた携帯電話よりも遥かに高機能でした。そのため、iPhone型の携帯電話はスマートフォン(スマホ)と呼ばれるようになりました(私は当時、その少し前にNintendo DSの無線通信機能に驚いたので、タッチパネルもあるし、気付いたら技術的は寄せ集めれば出来そうだったのになと思いました)。Appleは機能だけでなく、デザインやユーザーインターフェースにもこだわるので、見た目の格好良さが市場で大ヒットし、日本でもスマートフォンのシェアが拡大していきました。
iPhoneの登場後も日本ではすぐに追いついて開発しようとする勢いがありませんでした。それは大手キャリアの販売店経由でしか携帯電話を売れないという独自販売方式(本来高い機器を、利用料で回収していたこともある)が原因で、メーカーは独自にスマートフォンを開発したとしても売る環境がなかった、売ったとしても大手キャリアが販売する機器よりはるかに高くて売れないことが開発意欲低下の原因です(まさに、ガラパゴスという感じです)。

話を半導体に戻します(出てくる用語は下図を見ながら理解してください)。
半導体もインターネットの普及により、多くの人がパソコンを使うようになり、ノートPCが登場し、携帯電話に搭載する必要があることでますます発展していきます。この発展、集積密度向上の度合いはインテルの共同創業者の1人であるムーアが予言したムーアの法則(半導体の集積度は18-24カ月で2倍になる)[4][5][6]として有名です。
半導体技術も進化を続けるので、さらに微細なものを作って集積度を上げ、同じ面積でも高機能なものが作れるように発展します。

後編へ続く)

記事内容は平野先生HPより転載しております。

参考文献

  1. NHKスペシャル 電子立国 日本の自叙伝
  2. 日本半導体歴史館
  3. NHK映像ファイル あの人に会いたい「西澤潤一」
  4. “Gordon Moore: The Man Whose Name Means Progress”, IEEE Spectrum, Mar. 2015.
  5. “Moore’s Law Milestones”, IEEE Spectrum, Apr. 2015.
  6. “A Better Way to Measure Progress in Semiconductors”, IEEE Spectrum, July 2020.

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