CASES AND MATERIALS
事例/資料
現在,電気自動車やハイブリッド自動車において,動力源である二次電池としては高エネルギー密度の観点でリチウムイオン電池が最も応用されているが,電池の大型化,用途の多様化が進む流れの中で,高安全化技術の確立は重要な課題である. リチウムイオン電池は,充放電を繰り返すことにより劣化(サイクル劣化)するほか,放置することによっても劣化(保存劣化)することから,実車両に搭載されている電池の状態はその使用履歴に依存し,電池寿命を客観的に評価することは困難である.そのため,サイクル劣化,保存劣化を個別に評価する手法が一般的である1).ここでは,走行時の負荷変動や回生充電を含んだISOのサイクル寿命試験用の放電プロファイル2)を考慮する.図1に電力基準から電流基準に変更された放電プロファイルを示している.


$\chi^{\text {は }} 1 \mathrm{D}$ での無次元変数 $X$ を用いて次の式により得られる. $$ \tau \frac{\partial \chi}{\partial t}=-\nabla \cdot(-\nabla \chi) $$ $\boldsymbol{\tau}$ は拡散時間定数,$t$ は時間である。境界条件は $$ \begin{aligned} & \left.\nabla \chi\right|_{X=0}=0 \\ & \left.\nabla \chi\right|_{X=1}=-\frac{\tau I_{\mathrm{pos} / \mathrm{neg}}}{3 Q_{\mathrm{host}}} \end{aligned} $$ となる.$X=0$ は粒子の中心,$X=1$ は粒子の表面と定義される。 $Q_{\text {host }}$ は電極ホスト容量である.
集電板,集電箔および端子における電流分布は次 の式で求められる. $$ \begin{aligned} & \nabla \cdot \mathbf{i}_{s}=Q_{\mathrm{s}} \\ & \mathbf{i}_{s}=-\sigma_{\mathrm{s}} \nabla \phi_{\mathrm{s}} \end{aligned} $$ ここで, $\mathbf{i}_{S}$ は電流密度,$\phi_{\mathrm{s}}$ は電位,$\sigma_{\mathrm{s}}$ は導電率,$Q_{\mathrm{s}}$ は電流源である.
伝熱解析は以下の熱伝導方程式で計算される. $$ \rho C_{p} \frac{\partial T}{\partial t}+\nabla \cdot \mathbf{q}=Q_{\mathrm{h}} $$ ここで、 $T$ は温度,$\rho$ は密度,$C_{p}$ は熱容量, $\mathbf{q}$ は熱流束,$Q_{\mathrm{h}}$ は熱源である $. \mathbf{q}=-k \nabla T$ と定義され,$k$ は熱伝導度である.
図1に示した放電プロファイルをCOMSOLのイベ ントインターフェースによって導入する.COMSOL の設定画面を図3に示す.


参考文献
1) 松田智行, 安藤慧佑, 明神正雄, 今村 大地, JARI Research Journal, 20171002 (2017).
2) H. Lundgren, P. Svens, H. Ekström, C. Tengstedt, J. Lindström, M. Behm, G. Lindbergh, J. Electrochem. Soc., Vol. 163, No. 2, A309–A317 (2016)
3) 佟立柱,福川真,計算工学 25(4),4145-4150 (2020).
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