COMSOL Multiphysics® を用いたナノシート型電界効果トランジスタ(NSFET)およびWKB近似グレーデッドヘテロ接合のシミュレーション【セミナーアーカイブ】
こちらの資料は、「OMSOL Multiphysics® を用いたナノシート型電界効果トランジスタ(NSFET)およびWKB近似グレーデッドヘテロ接合のシミュレーション(2025年6月開催)」の動画・資料をアーカイブ化したものです。
セミナー詳細
https://kesco.co.jp/sinfo/?s_id=444441
セミナー概要
半導体セミナーシリーズの第3回目であり、先進的な半導体デバイスのモデリングとシミュレーションに焦点を当てています。
ナノシート型電界効果トランジスタ(NSFET)は、サブ5nm半導体技術においてFinFETに代わる次世代トランジスタアーキテクチャとして注目されています。NSFETはゲートが積層された水平ナノシートチャネルを完全に囲むゲート・オール・アラウンド(GAA)構造を採用しており、優れた電気的制御性を実現します。このアーキテクチャは、ナノシートの幅や積層数を調整することでスケーラビリティの向上、リークの低減、および駆動電流の調整を可能にします。さらに、NSFETは既存のFinFET製造プロセスと互換性があり、5nm以降の先進技術ノードへの導入が容易になります。
COMSOLを用いたNSFETの3Dシミュレーションでは、密度勾配理論(density-gradient theory)を活用し、量子閉じ込め効果を従来のドリフト・拡散(drift-diffusion)モデルに組み込むことで、計算効率と物理的精度の両立を実現しています。酸化膜層は幾何学的ドメインとして明示的に定義され、シリコン-酸化膜界面における量子閉じ込めを表現する専用の境界条件が適用されます。密度勾配モデルでは異方性の有効質量が用いられ、物理的挙動をより正確に反映しています。キャリアの生成と再結合は捕獲アシスト型ショックレー・リード・ホール(Shockley-Read-Hall)モデルおよびオージェ再結合モデルで評価されます。さらに、キャリア輸送に影響を与える各種散乱機構を考慮するために、Arora、Fletcher、およびLombardiの移動度モデルが実装されています。シミュレーション結果は、実験で報告されたId-Vg特性と良好に一致しています。
最後のセクションでは、熱電子放出理論に基づく電荷輸送モデルを用いて、グレーデッドヘテロ接合のシミュレーションを紹介します。トンネル効果を捉えるために、Wentzel-Kramers-Brillouin(WKB)近似を用いた量子力学的トンネル効果も組み込まれており、ポテンシャル障壁を越える電流の流れをより完全に表現しています。また、ユーザー定義の三元材料特性の実装方法も示します。シミュレートされたI-V特性、温度依存性、エネルギーバンド図はいずれも文献で報告されている結果と非常に良い一致を示しています。
■こんな方におすすめ:
このセミナーは、半導体デバイスのモデリングとシミュレーションを学び始めた初心者の方々から、先進的なMOSFET/NSFETシミュレーションについてより深い知見を求める上級者の方々まで、幅広い方を対象としています。
講師
ムルガナタン マノハラン
計測エンジニアリングシステム株式会社 技術部