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低電力DCアークジェットの解析

公開日:2024年5月20日
最終更新日:2024年5月20日

低電力DCアークジェット推進機の開発は近年、アメリカ、ドイツ、国内などで活発に行われ、アメリカではすでに実用化されている(1)。このような応用にDCアークジェットを適用する場合、耐久性が重要な問題となる。DCアークジェットの耐久性に影響を与えるものとして

  1. インシュレータの劣化
  2. カソードの損耗
  3. アノードの劣化

があげられる(2)。これらの難題を解消するため、DCアークジェットの基礎研究が重要である。その中で、プラズマ流の挙動が複雑であるため、数値計算は欠かせない有効な手法の一つである。本研究では、COMSOL Multiphysicsを用いて、電界、流れおよび伝熱の連成計算を行う。ガスのジュール加熱、正味放射損失およびエンタルピー輸送の計算によって、温度依存の気体特性を扱う。低電力DCアークジェット内のガス噴射と、ガス密度や電気伝導率などの温度依存のプラズマ流と熱伝達の特性を検討する。

図 1. 解析モデル.

図 1 に低電力DC アークジェットの解析モデルを示す。円筒形ノズルスロートの半径は $0.35 \mathrm{~mm}$, 噴射ノズルの漸拡角度は20である。計算中にアノードを接地し、カソードにDCアー ク電流値-10A を扱う。ガスの入口流量は $2 \mathrm{mg} / \mathrm{s}$ である。流れが層流として扱われる(3)(4)

計算用のCOMSOL物理インターフェースを図 2 に示している。プラズマ放電の熱源 $Q$ を伝熱(流体)インターフェースに連成させて、支配方程式を式(1)に示す。

$$
\begin{gathered}
\rho C_{p} \frac{\partial T}{\partial t}+\rho C_{p} \mathbf{u} \cdot \nabla T+\nabla \cdot \mathbf{q}=Q \\
\mathbf{q}=-k \nabla T
\end{gathered} \tag{1}
$$

ここで、$\rho$ は密度、$C_{p}$ は比熱容量、$\mathrm{T}$ は温度、$\mathbf{u}$ は流速、$\mathbf{q}$ は熱流束、kは熱伝導率である。熱源 $Q$ は、

マルチフィジックス機能によって以下に定義される。

  1. 抵抗加熱 (ジュール加熱): $$Q=\mathbf{J} \cdot \mathbf{E}\tag{2}$$
  2. 正味放射損失 $Q_{\text {rad }}$
  3. エンタルピー輸送

$$
\begin{equation} \frac{\partial}{\partial T}\left(\frac{5 k_{B} T}{2 q}\right)(\nabla T \cdot \mathbf{J}) \tag{3} \end{equation}
$$

環境温度は $20^{\circ} \mathrm{C}$、ガスは空気である。温度に依存するガスの導電率と熱放射係数は図 3 に示されている。空気の密度、比熱、粘度および熱伝導率は温度の関数として $24,000 \mathrm{~K}$ まで扱われる ${ }^{(5)}$。

図 3. 空気の導電率および熱放射係数.

本書では、解析モデルおよび、2章以後に図4の解析結果を作成する手順を示す。

図 4. ガスの流速, 温度及び導電率の分布.

図4はガスの流速、温度及び導電率の分布の計算結果である。カソードとアノードの間にガスのジュール加熱が強く、ノズルスロートの中心に温度が最大値になった。プラズマ流が噴射ノズルの漸拡領域に入った後、速度と温度が急に下がることをはつきり示した。容易に確認するため、DCアークジェット軸線(カソードの頂端からノズルの漸拡領域に)の上の温度と電気伝導率の分布も示している。温度と電気伝導率の数値を初期値から10倍以上に上げて示した。ガス温度は最高値からノズルの漸拡領域の外境界までの $12 \mathrm{~mm}$ 間で $1 / 5$ 下がり、1,000Kになった。電気伝導率の変化は温度と同歩しているが、4,000K以下の領域に電気伝導率は非常に小さいので、ジュール加熱への貢献が乏しい。

噴射ノズルの直径、ノズルの漸拡角度、DC電流値およびガスの入口流量などを検討することにより、DCアークジェットの設計改善が期待される。

参考文献

  1. Frisbee, R. H., J. Propuls. Power, Vol.19, No. 6, 1129-1154 (2003).
  2. 諏訪間康之ほか, 日本航空宇宙学会論文集, Vol. 50, No. 577, 79-85 (2002).
  3. Wang, H., Geng, J., Chen, X. and Pan, W., Phys. Procedia, Vol. 32, 732-742 (2012).
  4. Kaminska, A., Bialek, A. and Dudeck, M., Rom. Journ. Phys., Vol. 59, 745-756 (2014).
  5. Boulos, M. I., Fauchais, P. and Pfender, E., Thermal Plasmas: Fundamentals and Applications, Vol. 1, Plenum Press, Springer (1994).

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