講演概要
最初に、患者ごとに設計するテイラーメイドの医療デバイスを3Dプリントする場合に、疲労寿命のばらつきを製造前に予測するため、COMSOLによるCAEを活用した事例を紹介します。
しかしながら、本講演の主眼は、患者間の個体差をいかにCAEで考慮するか、という点に置きます。具体的に、インプラントの固定性の術中評価デバイスの開発支援の事例、および、熟練医のインプラント手術におけるスキルの定量化と教育のための力覚体感装置開発への応用事例を紹介します。ポーラスな海綿骨を対象とした力学的特性のばらつきを表現するX線CTイメージベース・マルチスケールモデリングや、熟練者のノウハウの定量化と技術伝承の話題など、工業分野の先端材料、バイオマテリアルや製造との共通点を意識し、さまざまな発展のきっかけとなる話題を提供いたします。
CAEと機械学習を連携した不確かさの評価
エンジニアは、医療機器の設計、製造、試験を行う際に、いくつかの課題に遭遇することがあります。一つの課題は、デバイスの設計と実装を取り巻く不確かさを理解することです。どの患者でさえ同じではないので、エンジニアは、複数の動作条件の下でデバイスがどのように機能するかを、許容できるレベルの信頼性を通して知る必要があります。その他の不確かさは、装置、様々な原材料の特性、熱処理プロセスなどの製造上のばらつきから生じることがあります。これらのばらつきは、性能の不確かさにつながり、部品の劣化や耐用年数の低下を招く可能性があります。その他の課題としては、臨床試験の実施や政府の厳しい規制に対応するための費用が挙げられるでしょう。
講演の後半では、弊社より機械学習と不確かさの定量化ソフトウェアSmartUQでの、バルーン拡張型冠動脈ステントの解析事例をご紹介します。実験計画法、機械学習を用いた統計モデル、およびベイズ統計学の技術を用いて、従来のCAEモデルを確率モデルへと拡張し、様々な現実の不確かさを実測データでキャリブレーションすることで、計算モデルのパラメトリックな不確かさを評価し、モデルを正しく検証する方法を説明します。
こんな方におすすめ
医療デバイス開発におけるリスク分析や、ばらつき・不確かさを含むデータの統計的・確率的な扱いの問題にご関心をお持ちのエンジニアや、製造プロセスにおけるノウハウの数理的表現による技術伝承の補助にご関心をお持ちのエンジニア・マネージャーの方から、テイラーメイドの製品製造に適した3Dプリント(主にチタン系金属粉末のレーザ焼結方式)にご関心をお持ちの方まで、幅広い分野での活用が期待される確率的シミュレーションにご興味をお持ちの方々におすすめします。
講師紹介
高野 直樹 先生
慶應義塾大学理工学部教授
日本機械学会フェロー、日本計算工学会フェロー、日本複合材料学会フェロー
中野 智宏
計測エンジニアリングシステム株式会社
Information
開催日時 | 2023年5月19日(金) 13:00-15:00 |
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所要時間 | 高野先生講演:講演90分(質疑含む) KESCO:30分(時間は多少前後します) |
開催方式 | オンライン |
受講環境 | Microsoft Teams |
申込期限 | 2023年5月16日(火) 17:00 まで |
参加費用 | 無料 |
備考 |
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