AI外観検査における「ディープラーニング」と「ルールベースAI」の比較と活用法

AIを活用した外観検査技術は急速に進化しており、特にディープラーニングとルールベースAIのどちらを選択すべきかが重要な課題となっています。本記事では、それぞれの特徴を比較し、用途に応じた選択について解説します。
目次
ディープラーニングとは?
ディープラーニングとは、多層のニューラルネットワークを用いて、大量のデータから特徴を自動学習する技術です。従来のルールベースAIとは異なり、データからパターンを見つけ出し、未知のデータにも適応する能力を持ちます。そのため、外観検査においても複雑な形状や多様な欠陥パターンを高精度に識別できます。
ルールベースAIとは?
ルールベースAIとは、事前に定義したルールや閾値に基づいて動作する人工知能です。画像処理や異常検知の分野では、閾値やパターンマッチングを活用し、対象物の特徴を分析して異常を検出します。シンプルな基準が明確な場合には高精度を発揮し、導入や運用が容易ですが、新たな欠陥が発生した場合には手動でルールを追加する必要があり、変化の多い環境では対応が難しくなります。

ディープラーニングによる外観検査
仕組みと特徴
機械学習を活用した外観検査は、大量のデータを解析し、欠陥や異常を自動的に学習することで高精度な判定を可能にします。教師あり学習や教師なし学習を用い、収集した画像データを基にAIが特徴を抽出し、新たなデータに対しても適切な判断を行います。
ルールベースAIとの違い
ルールベースAIは定められたルールに基づいて欠陥を識別しますが、機械学習はデータからパターンを学習し、未知の欠陥にも対応できる柔軟性を持ちます。特にディープラーニングを活用した手法では、複雑な形状や微細な欠陥も高精度に検出可能です。
課題とコスト
機械学習には大量の学習データが必要であり、準備に時間とコストがかかる課題があります。また、学習済みモデルの判断基準がブラックボックス化しやすく、結果の解釈が難しくなる場合があります。導入時には適切なデータセットの準備やモデルの更新が求められます。
適用範囲と有効性
機械学習による外観検査は、複雑な製品や多様な欠陥パターンに対応する必要があるケースに適しており、製造業や半導体産業など、厳しい品質管理が求められる分野で特に有効です。
ルールベースAIによる外観検査
仕組みと特徴
ルールベースAIは、あらかじめ設定されたルールや閾値に基づいて動作し、特定の条件に適合するかどうかを判定する手法です。明確な基準が存在する場合に有効で、単純な製品の検査では高い精度を発揮します。
導入と運用の容易さ
事前に定義されたルールに従って判断が行われるため、比較的簡単なシステムでは、導入や運用が容易です。しかし、複雑なシステムでは、ルールの定義とシステムへの組み込みが必要となり、難易度が高くなる場合があります。
限界と課題
しかし、新たな欠陥の種類が増えたり環境が変化した場合、適切な判断が難しくなります。新しい異常に対応するためにはルールの修正が必要になり、柔軟性に欠ける場合があります。そのため、高度な検査が必要な場合は、ディープラーニングなどの機械学習手法との組み合わせが有効です。
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ディープラーニングとルールベースAIの比較
AI外観検査において、ディープラーニングとルールベースAIの選択は、検査対象や要件によって異なります。以下の表は、それぞれの特性を比較したものです。
項目 | ディープラーニング | ルールベースAI |
---|---|---|
適応性 | 高い(未知の欠陥にも対応可能) | 低い(新しい欠陥にはルール追加が必要) |
精度 | 高精度(複雑な形状や微細な欠陥も識別可能) | 限定的(決められたルールの範囲内でのみ検出可能) |
導入コスト | 高い(大量の学習データや計算リソースが必要) | 低い(明確なルール設定のみで運用可能) |
柔軟性 | 高い(継続的な学習で改善可能) | 低い(固定されたルールに依存) |
解釈性 | 低い(ブラックボックス化しやすい) | 高い(どのルールで判断されたか明確) |
選択基準
- 未知の欠陥に対応する必要がある場合:ディープラーニングが適しています。
- 明確なルールで判断できる場合:ルールベースAIが有効です。
- コストや導入期間を抑えたい場合:ルールベースAIが導入しやすいです。
- 高精度な識別が求められる場合:ディープラーニングの方が優れています。
ルールベースAIの限界
ルールベースAIは、明確な閾値や定義済みのルールに基づいて動作するため、特定の条件下では非常に効果的です。しかし、その反面、新しい欠陥や環境の変化に適応する能力が限られています。例えば、製造業の外観検査では、特定の傷の大きさや形状を検出するようルールを設定できますが、未知の欠陥や微妙な違いを認識することが難しい場合があります。
また、ルールベースAIは、欠陥の種類が増えるごとに新たなルールの追加が必要になり、システムの管理が複雑化する傾向があります。これにより、開発コストやメンテナンスの手間が増大し、最終的にシステムの運用負担が大きくなる可能性があります。ルールベースAIは大量のデータを活用して柔軟に学習する能力を持たないため、未知のパターンやイレギュラーな異常に対応できません。この点で、ディープラーニングを用いたAIと比較すると、適応性に欠ける点が大きな課題となります。
そのため、高度な欠陥検出を求める場合や、環境が頻繁に変化する状況では、ルールベースAI単独では不十分であり、ディープラーニングを活用したハイブリッドなアプローチが推奨されます。
まとめ
AI外観検査では、ディープラーニングとルールベースAIのどちらを選択するかは、検査対象や要件によって異なります。企業のニーズに応じて、両者を組み合わせたハイブリッドな手法を導入するのも有効な選択肢となるでしょう。
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少ない学習データで迅速なAI外観検査導入を実現
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